健康保険の被扶養者を解説!!106万円の壁、130万円の壁、家族の範囲、収入などの認定基準(2016年10月改正対応)

斜め横を見上げるモモ

働く上で頭をもたげる「扶養」の問題。ですが、「扶養」といっても、法律においてそれぞれ定義は違います。

そんな各制度の扶養制度の中で、特に気になってくるのが、健康保険・厚生年金保険・所得税でしょう。ここでは健康保険法に焦点を当てて、被扶養者について解説していきます。

なお、社会保障制度の一端を担う医療保険制度は、加入している者が保険料を納め、何かあった時に給付を受けるというのが本来の姿です。被扶養者になった方が得だ損だといった誤った見方は適当ではありません。矯めなければ負担は回り回って大きくなります。

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健康保険法の被扶養者とは

公的医療保険制度である健康保険法には、「被扶養者」という仕組みがあります。

これは、被保険者の収入で生計を維持している一定範囲の家族は、被扶養者の認定を受けることで被扶養者本人が保険料を納めなくても、給付が受けられる制度です。ここでいう「被保険者」とは、健康保険(健康保険組合を含む)に加入している人を指します。

給付が受けられる、つまるところ被保険者証(いわゆる保険証)が被扶養者に配布されるということです。一番馴染みのある例は、この被保険者証を持って病院や診療所で診察を受けると、費用負担が3割担で済むということです。

この「被扶養者」として認定を受けるためには、いくつかの条件(認定基準)をクリアしないといけません。それを順を追ってお伝えします。

手続は被保険者の勤める会社で行われる

被扶養者の認定を受ける手続は、被保険者が働く会社で行われます。

夫が健康保険の被保険者で、妻や子供を扶養に入れる場合は、夫が働く会社で手続が行われます。扶養認定の手続きをする際には、要件確認の書類を準備してください。

国民年金法の被扶養配偶者について

国民年金法に似たようなものとして、「被扶養配偶者」というものがあります。これは国民年金第3号被保険者になるかどうか判断する要件の一つです。

「被扶養配偶者」かどうかの判断は、次にみていく健康保険の被扶養者の認定基準と同等です。

いろんな個人サイトで間違った記述が見られますが、被扶養者認定を受けたとしても、「厚生年金保険」の扶養に入ることはありません。そもそも厚生年金保険には被扶養者制度はありません。

国民年金の第3号被保険者になるかならないか、そのどちらかに決まるだけです。国民年金の第3号被保険者については別の記事で扱います。

社会保険の加入と被扶養者の認定は別物

被扶養者の認定と混同されがちなのが、社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入についてです。

パート・アルバイトの方の社会保険は、職場の労働者(フルタイムで働いている人)に比べ、労働時間と労働日数が4分の3以上の場合は、収入に関わらず入らなければいけません。

平成28年10月からは、大きな企業で働ている場合、月額88,000円以上の収入と他の要件を満たす時も加入することとなります。

この点はしっかり分けて考えないといけません。

被扶養者の認定基準

被扶養者の認定を受けるには、

  1. 被保険者の一定の範囲内にいる家族であること
  2. 被保険者に生計を維持されていること

この2つの要件を満たす必要があります。簡易的に判断する方法としては、全国健康保険協会が作成した点検チャートがあるので使ってみてください。

全国健康保険協会 扶養認定チャート

被扶養者の認定について、加入している保険者によって手続書類や取扱方が異なることがあります。つまり、中小企業の多くが加入している全国健康保険協会、大企業並びに関連企業が設立する健康保険組合によって異なる可能性があります。

一般的に、健康保険組合は厳しく判断される傾向にあります。

それでは、被扶養者になれる家族の範囲をみていきます。

被扶養者の範囲について(扶養に入れる家族)

扶養に入るかどうかの一つ目の条件は、家族の範囲についてです。

被扶養者とされる家族の範囲は、三親等内の家族であって、同一世帯関係(いわゆる同居)の有無が問われます。

なお、原則75歳以上の家族は、ご自身が後期高齢者医療制度という医療保険制度に加入するため、被扶養者になれません。

被扶養者となる家族の範囲

被扶養者となる家族の範囲(全国健康保険協会より)

以下の表にまとめましたので、ご覧ください。

 被扶養者とされる家族(三親等以内の家族)  同居要件
  1.  被保険者の直系尊属、配偶者(内縁者含む)、子、孫、弟妹
  2. 兄姉(28年10月1日から)
 無
  1. 被保険者の三親等内の親族で上記以外の者
  2. 内縁関係にある配偶者の父母および子
  3. 2の配偶者の死亡後における父母および子
 有

28年10月1日より改正が入り、今まで扶養認定には同居が必要だった被保険者の「兄姉」が、同居の有無は問われなく成りました。

また、血族の配偶者は被扶養者の認定を受けられますが、姻族の配偶者は認定を受けられません。

  • 血族:血の繋がりのある人、血縁関係にある人のこと。実の親子、兄弟など。
  • 姻族:婚姻によって、配偶者の一方と他方の血族との間に生じる関係のこと。夫からみた妻の父母、妻からみた夫の父母など。

親等(しんとう)の数え方

親等は、親族関係の隔たりの表し方です。実の父母であれば一親等、実の兄弟姉妹であれば二親等とします。

同じ兄弟姉妹を一親等と思いがちですが、数え方は先ず親へさかのぼり(これで一親等)、親から兄弟姉妹へ進む(これで二親等)というものです。横の移動はしないと考えると分かり易いと思います。

被保険者の直系尊属について

被保険者の直系尊属とは、被保険者の父母・祖父母・曾祖父母のことです。また、被保険者と養子縁組をしている養父母も含まれます。

配偶者の父母・祖父母などは、表の1の「被保険者の三親等内の親族で上記以外の者」に該当し、同居要件が問われます。

配偶者について

配偶者については、少々問題に成りやすいのが「内縁関係」です。

扶養認定には、被保険者と事実上の婚姻関係にある者、つまり内縁関係にある者も含まれています。事実上の婚姻関係とは、婚姻の届出を出していないだけで、提出すればいつでも法律上の夫婦となれる状態を言います。

よって、それを確認する書類として、重婚状態では無いことを証明するために「内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本」と、「被保険者の世帯全員の住民票(個人番号の記載がないもの)」を提出しなければいけません。健康保険組合の場合は、より厳格に判断されるため、それ以外の書類も求められる場合があります。

子について

表のAの「子」とは、民法上の子を指し、実子・養子がそれです。同居要件はありません。

実子・養子以外の、法律上の夫婦となる前からいる子は、「継子」となるので表の1の「被保険者の三親等内の親族で上記以外の者」に該当するため、同居要件があります。

内縁関係にある者の子はいわゆる「連れ子」であり、表の2・3の「内縁関係にある配偶者の子」に該当します。こちらも同居要件が問われます。

なお、離婚によって法律上の夫婦が解消された場合では、実子・養子との関係に影響はありませんが、別居する場合はちゃんと生計維持していること(十分な養育費など)が重要です。

同居(同一世帯)の判断について

被保険者の直系尊属、配偶者(内縁者含む)、子、孫、弟妹(28年10月からは兄姉が追加)以外の家族は同一世帯、端的に言えば同居が求められます。判断する資料としては「住民票」があります。

施設への入所や入院といった一時的な別居の場合は、同一世帯であると判断されます。

次に、生計維持要件をみていきます。

生計維持要件について(130万円などの年収要件)

扶養に入れるかどうか判定する二つ目の条件として、生計維持要件もクリアしなければいけません。生計維持要件は、被保険者にお金の面で多くの部分の面倒をみてもらっているかどうかを問うものです。

被扶養者の認定を受けようとする者の年収が、年間130万円未満(60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害状態にある方は180万円未満)

であって、かつ

  • 同居の場合は、被保険者の年収の半分未満であること
  • 別居の場合は、被保険者からの仕送り等の援助より少ないこと

が必要です。巷で言われる「130万円の壁」が登場します。少し詳しくみていきます。

130万円の壁とは

健康保険の被扶養者となる上で、よく問題となる年収130万円の壁(認定を受けようとする人等が60才以上であれば180万円)。どこからどこまでをみて計算するのでしょうか。

よく勘違いされるのが、1月から12月までの合計収入で判断するというものです。これは誤りで、所得税などの税金方面と混同されがちです。税の考え方とは全く異なるので切り離して考えましょう。

正解は、扶養認定を受ける時点から将来1年間の見込み収入で判断します。パートタイマーなどの方であれば、認定時の給与収入などが(130万円÷12ヶ月=)月額108,333円以下であることが必要です。60歳以上等であれば、月額15万円以下です。

パート・アルバイトで通勤手当が支給されていれば、当然それも含まれます。6ヶ月分の定期券で支給された場合でも、1ヶ月に換算して同様に含んで計算します。

他にも重要な点として、130万未満要件は課税非課税の別はありません。すべて合計して計算します。非課税通勤費(交通費)ももれなく合算します。

やはり税の考え方とは全く異なるわけです。よって、次に見る「雇用保険の失業等給付」や「障害年金・遺族年金など」といった非課税の収入も注意しなければいけません。

雇用保険の失業等給付を受給する場合

失業により、雇用保険の失業等給付を受給する場合、原則として被扶養者になることは出来ません。

ただし、失業等給付、例えば基本手当(これが世間で言う失業保険)の日額が3,611円以下であれば、被扶養者となることが可能です。これは130万円を360日(1年相当)で割った金額です。60歳以上であれば、日額5,000円以下となります。

また、自己都合退職など基本手当の給付制限期間中で、その間、特に収入がない場合は制限期間中から被扶養者の認定を受けられる場合があります。

基本手当の日額が3,611円を超える際も、給付制限期間中限定で同様に扱われる場合があります。ただし、給付制限が明けて基本手当が支給され始めた暁には、被扶養者から外れなければいけません。

基本手当の日額を証明する書類は、ハローワークで求職の申込を行った際に発行される「雇用保険受給資格者証」です。

老齢年金の扱い

老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)を受給されている方も要件を満たせば被扶養者の認定を受けられます。

年金を受け取りながら働いている場合、年齢は60歳以上でしょうから年金額と給与額を合算して年間180万円未満であることが必要です。

年金の年間額を証明するものとして、「年金額の改定通知書などの写し」を準備しましょう。毎年ハガキで送られてきます。

障害年金や遺族年金など非課税の収入の扱い

障害年金(障害基礎年金や障害厚生年金など)、遺族年金(遺族基礎年金や遺族厚生年金など)、資格喪失後に給付されている健康保険等からの「傷病手当金」、「出産手当金」といった給付は非課税ですが、これらも130万円要件に含まれてきます。

年金を受給しつつ働いている場合は、年金額と給与額の合計で130万円ないし180万円未満であることが必要です。

年金額を証明する書類は、直近の「年金の受給金額が分かる書類の写し」などがあります。通常は葉書で毎年送付されます。

傷病手当金や出産手当金は、「受給額の分かる通知書などの写し」を用意しましょう。

自営業や配当収入や不動産収入などの扱い

株や債権などの配当収入や不動産収入なども130万円要件で問われてきます。収入を確認する書類として、直近の「課税証明書」(市役所で発行)や「確定申告書の写し」などがあります。

株式の配当金について特定口座制度を利用している場合は、利用中の証券会社から「年間取引報告書」が発行されるので、そちらで金額を証明できます。

別居時の仕送りの証明は?

別居をしている場合、生計維持を証明するものは一般的には仕送りの額です。通常は預金通帳の写しから被保険者により生計を維持しているかどうかを確認します。

収入が被保険者の収入の半分未満でない場合は?

同居の場合、被扶養者になろうとする人の収入は、原則として被保険者の収入の半額未満であることが必要です。ただし、協会健保の場合、その世帯の生計の状況を総合的に勘案して、被扶養者として認めることがあります。

28年10月からの厚生年金保険・健康保険の適用拡大による影響

平成28年10月1日から厚生年金保険・健康保険の適用範囲が拡大されることになり、大企業に勤めるパート・アルバイトの方は自身が厚生年金保険・健康保険に加入する機会が増えることになりました。

このことにより、健康保険法の扶養認定は複雑になります。

いわゆる106万円の壁の問題

話題となっている「106万円の壁」は、法改正によって生まれた健康保険・厚生年金保険の加入要件の一つです。扶養認定とは全く別物ですので、しっかりと分けて考えなくてはいけません。

健康保険・厚生年金保険の加入要件(月額88,000円以上、年換算で106万円)と、健康保険の年間130万円の収入の考え方は全く違います

ここで先ず問題となるのが、新たに出来た加入要件を満たすパートやアルバイトの方です。健康保険の被扶養者と成りうる家族の範囲内であって、年間の見込み収入が130万円未満であっても、改正による新しい適用範囲に含まれていれば、ご自身がお勤めの会社で保険加入することになります。

要件を簡単に紹介します。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金8.8万円以上
  3. 勤務期間が1年以上を見込まれること
  4. 学生ではないこと
  5. 従業員数が500人を超えている企業

前提として、従業員数(正確には社会保険の被保険者数)が500人を超えている大企業に勤めている方が原則として対象となってきます。

次のポイントは、「106万円の壁」、つまり月額賃金88,000円円以上の給与がある場合、加入要件の一つを満たすことです。他にも要件があるのですが、パートやアルバイトで働く人の多くは簡単に満たすものなので、賃金が注目されています。

加入条件を満たすと、ご自身が厚生年金保険と健康保険の被保険者となり、保険料負担が発生することとなります(40歳以上65歳未満であれば介護保険料も発生)。今まで被扶養者であった方でも、勤務先の会社で保険加入する流れと成ります。

なお、「130万円の壁」が無くなる訳ではありません。上で見た「106万円の壁」などの条件に合わずに健康保険・厚生年金保険へ加入出来ないと判断された場合、引き続き従来の扶養認定の条件で扶養に入れるかどうか判断されます。

健康保険の扶養認定と、健康保険・厚生年金保険の加入要件を多くの方が混同されています。判断の流れとしては、次の通りです。

  1. 先ず健康保険・厚生年金保険の加入義務があるか
  2. 加入義務がなければ、扶養認定の要件を満たしているか

加入要件などの詳細は、以下の記事をご一読ください。
パート・アルバイトの社会保険の基礎知識!加入条件やメリットは?2016年10月以降対応版

資格喪失後の傷病手当金や出産手当金

社会保険の適用拡大に伴って、パートやアルバイトの人は傷病手当金や出産手当金を受給する機会が増えると予想されます。

これらの保険給付は、被保険者中に受給要件を満たしていれば、資格喪失後もその状態が続いていると引き続き受け取ることができます。

忘れがちですが、これらの給付金も130万円要件に含まれるので、扶養認定の際には気をつける必要があります。

あとがき

よく間違われる健康保険の扶養認定ですが、社会保険の加入要件と区別して整理することが大切です。

ただ、平成28年10月の社会保険の適用範囲拡大によって、複雑化してきました。働き方は今後の人生に大きな影響を及ぼします。労働人生の設計を見つめなおす契機となれば幸いです。