パート・アルバイトの社会保険の基礎知識!加入条件やメリットは?2016年10月以降対応版

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仕事の上で、パートタイマー・アルバイトで働いている人や、中小零細企業さんからよく聞かれるのが、「パートやアルバイトで働く場合、社会保険に入らないといけないの?」という質問です。

その疑問の根底には、社会保険はフルタイムの人(一般的に正社員と呼ばれる人)だけが入るものといった認識からくるものだと日々感じています。

また、パートさんやアルバイトさんの加入要件がはっきり明言されていないことも一因としてあるでしょう。

ここでは、長年の疑問の一助となればということで、一応専門分野でもありますし、綴りたいと思います。

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そもそも社会保険とは?

この質問での「社会保険」とは、「厚生年金保険」と「健康保険」を指しています。社会保険は、広い意味では「労災保険」と「雇用保険」を含みますが、今回は省きます。他の医療保険制度である共済組合も除きます。

厚生年金保険と健康保険は手厚い保険給付が備わっている公的制度です。このページでは、社会保険を厚生年金保険健康保険として考えていきます。

厚生年金保険と健康保険

厚生年金保険は、公的年金制度です。原則65歳以上のリタイア世代の所得代替である「老齢厚生年金」は皆さんご存知だと思います。それ以外に被保険者期間中に障害を負われた方には「障害厚生年金」が、亡くなられた場合にはご遺族に「遺族厚生年金」が支給されます。

なお、厚生年金保険に加入すると、厚生年金保険の被保険者となるとともに、国民年金の第2号被保険者となります。この場合、保険料の負担は厚生年金保険料のみとなり、別に国民年金保険料を支払う必要はありません。

(厳密な話をすれば、厚生年金保険料の中に、国民年金保険料相当額が含まれています。)

健康保険は、公的医療保険制度です。病院で受診等・薬局で薬剤購入したときに、保険証(正式には被保険者証)を窓口に提示すれば、支払金額が3割だけで済む「療養の給付」が一番なじみがあるかと思います。健康保険はそれ以外にも沢山の給付があり、世界に誇れる優れた制度です。

パート・アルバイトの社会保険加入とは?

パートさんやアルバイトさんは、社会保険に入る前はどういう状態なのでしょう。メジャーな例でいくと、年金制度面では「国民年金」に、医療保険制度面では「国民健康保険or医療保険制度の被扶養者」に既に加入しています。皆、何かしらの社会保険に必ず包まれています。

パートやアルバイトの人が勤務先で社会保険に入るという話になると、一般的に年金制度からみると“国民年金から厚生年金保険に加入”、医療保険制度からみると“国民健康保険or各医療保険制度の被扶養者から健康保険に加入”ということを指します。

それでは早速、社会保険の加入要件を確認しましょう!!と、その前によく勘違いされる「社会保険の加入要件」と、健康保険の「扶養認定要件」の違いを確認します。

なお、この記事で想定している年齢層は、20~60歳代の方です。

社会保険加入要件と扶養認定要件は別物

加入要件を考える際に、よく混同されがちなのが健康保険等の扶養認定です。

パートやアルバイトの人の社会保険加入要件の中に、フルタイムの人と大きく違う点があります。それは、フルタイム(世間で正社員と呼ばれ、所定労働時間が長い人)で働く方と労働時間を対比して考えるという点です。

  • パート・アルバイトの1日(又は1週間)の労働時間がおおむね4分の3以上
  • パート・アルバイトの月の労働日数がおおむね4分の3以上

見ていただければお分かりの通り、2016年9月までの加入要件には「年収要件」がありません。新法が施行される2016年10月以降も、500人以下の被保険者がいる事業所でお勤めの場合は、原則、年収要件はありません。つまり、今まで通り、労働時間と労働日数で判断します。

FP(ファイナンシャルプランナー)や会計事務所が運営するサイトなどで、社会保険の加入要件として「年収が130万円以上である」であることを挙げているサイトがちらほらありますが、それは誤りです。

年金事務所の適用課(加入対応する課)や年金事務センター(各都道府県にある届書や申請書の処理するところ)では、年収要件で判断はしていません。たとえ年収100万円だったとしても、上記の要件を満たしていれば加入義務が発生します。

この勘違いは、被扶養者の要件と混同しているためと思われます。被扶養者要件の中には年収要件がありますが(いわゆる130万円の壁)、ここでは関係ありません。被扶養者になれるかどうかの年間の見込み収入130万円の要件は、28年10月の法改正では変わっていません。

なお、健康保険の被扶養者については、下記の記事で解説していますのでご一読ください。

健康保険の被扶養者を解説。家族の範囲や収入などの認定基準について

最近では、年金事務所による定期調査・臨時調査時に労働契約書・タイムカード・賃金台帳・所得税の納付証明書(領収書)で加入漏れが無いかチェックされます。パートさんやアルバイトさんの労働時間と労働日数が上記の要件を満たしていれば、即時加入を求めてきます。

ブラック企業対策の一つとして、指導は年々厳しくなっていますので、厚生年金保険等に入りたくても入れなかった人には明るい兆しです。

それでは、本題に入っていきます。

2016年9月までのパート・アルバイトの厚生年金保険・健康保険の加入要件は?

パート・アルバイトさんの厚生年金保険・健康保険の加入要件は、フルタイム(正社員などを指します)で働かれている人に比べ、若干複雑です。

加入できる年齢は、フルタイム・パート・アルバイト共通です。厚生年金保険は70歳になる前まで、健康保険は75歳になる前まで加入できます。

原則、適用事業所で働いていることが前提(28年10月以降も同様)

先ず、原則、お勤め先が厚生年金保険・健康保険の適用を受けていることが前提です。平成28年10月以降も変わりません。

これはフルタイム・パート・アルバイトと共通です。「適用」とは加入の意味だと思ってください。勤め先自体がこの適用事業所(事業所は、おおざっぱに言えば会社です)となっていなくてはいけません。

法人の事業所(法人は株式会社・有限会社・医療法人・社会福祉法人など)であれば、必ず適用を受けなければいけない事業所です。適用事業所でなければ違法の会社ということです。これは業種や規模は関係ありません。

個人事業主の下で働いている場合は、常時働いている人が5人以上いないと適用の義務はありません。ですから、例として従業員が3人の個人商店は適用を受けなくてもいいのです。個人事業主は規模が小さいため、保険料負担が難しいので、加入している割合は低いのが現状です。

例外として5人以上従業員がいたとしても、適用が任意とされている事業があります(一部のサービス業や農林水産業)。

お勤め先が適用事業所かどうかよく分からない時は、日本年金機構の企業検索ページから探すことができます。

事業所検索システム:日本年金機構

常態として使用されていること(28年10月以降も同じ)

一般的に、働く期間を定めることなく契約をした、もしくは2ヶ月を超える契約を結んだ場合は、社会保険の加入要件を基本的に満たします。予め働く期間がごく短いアルバイト等の方以外は気にしなくても大丈夫です。

この要件も28年10月以降同様に生きています。

上記のような人は常態として働いているとされ要件の一つを満たします。逆に、どうやっても被保険者になれない人は次の人です。(健康保険法第三条1項ただし書、厚生年金保険法十二条2項ただし書を筆者により一部変更)

  • 臨時に2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない人
  • 臨時に日々雇用される人で1か月を超えない人
  • 季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人
  • 臨時的事業の事業所に6か月を超えない期間使用される予定の人

例えば、雇用契約時に「1ヶ月以内で雇用が終わる」と定められている場合は、2ヶ月を超えていないので加入要件から外れます。ただし、当初2ヶ月以内の契約だったものが途中で変更されて、結果的に当初の契約期間が延長されることとなった場合は、その変更時点で加入要件を満たします。

また、社会保険の適用を避けるために、2ヶ月以内の雇用契約を結び、契約終了後に若干の間隔をあけて再度同じような短期契約を結ぼうとする場合がありますが、脱法行為とみなされる場合があります。実態としては臨時性ではなく継続性のある雇用として扱われます。

「常態として使用されていること」とする条件も、フルタイム、パート・アルバイトと共通です。フルタイムの方は、先に述べた適用事業所において、常態として使用者の元で働いていれば、社会保険に加入しなければいけません。まとめると、次のようになります。

フルタイムの加入要件
  • 適用事業所で働いていること
  • 常態として使用されていること(働いていること)

フルタイムとパート・アルバイトの加入要件の違いは次の項目からです。

パート・アルバイトは労働時間・日数の4分の3要件がカギ

ここからがミソです。パート・アルバイトさんを厚生年金保険・健康保険の被保険者として扱うかどうかは、適用事業所のフルタイム社員さんと、労働時間と労働日数を比較して判断されます。

労働者が厚生年金保険・健康保険に加入すると、各々の制度の「被保険者」となります。

先ほど見た同じ要件です。フルタイムで働く人と一緒にパート・アルバイトさんが働いている場合、フルタイムの人と比べて、

  • パート・アルバイトの1日(又は1週間)の労働時間がおおむね4分の3以上
  • パート・アルバイトの月の労働日数がおおむね4分の3以上

以上の2つの基準を満たしていることが、通常の適用の要件となります。「週30時間以上であること」とだけを断言しているサイトがありますが、誤りです。

労働時間や労働日数は、基本的に契約時の労働条件で判断します(雇用契約書、労働条件通知書など)。労働条件と実際の勤務状況とに差異が生じている場合は、実態に即した契約に変更すべきでしょう。

なお、日によって働く時間が変わる変則的な働き方の場合は、「1日の労働時間」を「1週間の労働時間」に置き換えて判断します。

また、所定労働時間が7、8時間と長い人がおらず、所定労働時間が4、5時間など短い人のみの会社の場合、その会社の一般的な社員は所定労働時間が短いの人となるので、4分の3要件を考える事無く労働時間の短い人は被保険者となります。何件か扱ったことがありますが、概ねこの通りです。詳細は管轄の年金事務所で確認を。

この基準は昭和55年6月の内簡(行政省庁内のお手紙、厚生省保険課長が各都道府県の保険課・部長宛のもの)からきています。お手紙の内容で事務が執り行われています。

詳しく知りたい人は、厚生労働省の資料が参考になります。次のリンク先のPDF7ページ目に、4分の3要件の基となった資料があります。公的年金制度の企画立案と事業実施の関係について(pdfファイルが開きます)

お手紙なので、法律ではありません。よって、各年金事務所などで事務の取り扱いや対応の厳しさは異なっているのが現状です。

法改正によって2016年10月からは、パートさんやアルバイトさんの適用要件がしっかりと法律に明記されました。事業所規模によっては「月収88,000円以上」など収入要件までもが規定されます。内容はこの後に触れます。

よって、パート・アルバイトの方の社会保険適用条件をまとめると次の通りです。複数の事業所で働く、いわゆるダブルワークの方は、各々の事業所ごとで要件に当てはまるかを考えます(ダブルワークで働く場合、それぞれの会社で社会保険の要件に該当することは、あまり有りません)。

  • 適用事業所で働いていること
  • 常態として働いていること
  • 事業所の通常の労働者の1日又は1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数がおおよそ4分の3以上であること(28年10月改正前まで)

4分の3要件の一例

例えば、所定労働時間(会社が定めた就業時間)が1日8時間、月20日で働いているフルタイム社員がいるとします。この条件に、先ほどの4分の3以上要件を当てはめると、

  • パート・アルバイトの1日の労働時間がおおむね6時間以上
  • パート・アルバイトの月の労働日数がおおむね15日以上

以上の2つに該当するときは、パート・アルバイトを加入させる必要が出てきます。これは一つの目安であり、個々の事例に応じて年金機構や健康保険組合などが総合的に判断します。間違っても、会社が勝手に判断するものではありません。

労働契約期間がごく短期の場合は入れない

厚生年金保険・健康保険の被保険者については、先に見たように、常用的な使用関係があることが念頭にあります。つまり、働く期間がとても短い人は、そもそも被保険者に含まないという考え方です。フルタイム、パート・アルバイトのどちらにも共通する概念です。

「働く期間がとても短い」とは、どれくらいの短さなのか。「臨時に使用されるもので、2月以内の期間を定めて使用される者」は、はなっから適用から除外されています。(厚生年金保険法第十二条第1項1号のイ http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO115.html

例えば、お歳暮シーズンだけのデパートの売り子さんがそれです。イメージしてください、お歳暮シーズンという臨時的であること、お歳暮のセール会場は1ヶ月程度しか催されていないことを。このような働き方の場合は適用されません。

ただし、お歳暮シーズンが終わり、引き続き、地方のうまいもの市や物産展で売り子をするなど、当初予定していた所定の労働期間を延長して働く場合は、先ほどの4分の3要件に当てはまっていれば、適用されることになります。

季節的業務はどんなもの?

「季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人」も社会保険の加入はできないこととなっています。

ここで問題なのが、「季節的業務」って何ってことです。季節的業務とは一般的に、清酒製造・スキー場・製茶といった、四季の自然の移ろいと密接不可分な業務を指します。そういった業務で働く人は、例えば、冬の時期に酒を仕込む杜氏さんやスキー場の従業員などが想像しやすいでしょう。

先ほど見た百貨店やスーパーでの売り子さんは、四季の自然の移ろいとは直接的な関係はありません。よって、季節的業務に該当しないというのが一般的な考え方です。

2016年10月以降のパート・アルバイトの厚生年金保険・健康保険の加入要件

「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」が2016年10月1日に施行されることにより、適用要件が大きく変わります。

また会社の規模によって、要件が変わってきますので分けて考えます。なお、会社の規模は同一法人格に属する適用事業所の合計人数で判断されます。

例えば、A株式会社東京本店に400人、大阪支店に200人いるとすると、合計で600人(500人超)と計算されます。

今回の改正で影響を受けやすいのは全国チェーン店で働く方でしょう。特に飲食業やサービス業でパートなどをされている方は要チェックです。

従業員(被保険者)数が500人以下の企業の場合

大きな変更点は、4分の3要件が法律に明文化された点です。

事業所の通常の労働者の、1週間の所定労働時間または1ヶ月の所定労働日数が4分の3未満である短時間労働者は、社会保険の適用除外と明確に規定されました。

これを言い換えると、

事業所の通常の労働者の、1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が4分の3以上である短時間労働者は社会保険の適用をうける、ということです。

改正前までは、1日又は1週間の所定労働時間で判断していたところ、改正後は1週間に一本化した点が違います。また、「おおよそ4分の3」としていたところの「おおよそ」というぼやけた表現が外れました。この改正を含めて、加入条件は次のようにまとまります。

  • 適用事業所で働いていること(従来と同じ)
  • 常態として働いていること(従来と同じ)
  • 事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が4分の3以上であること(改正)

次に、加入の有無についての一例です。フルタイムの労働者(週38時間の所定労働時間かつ1ヶ月20日の所定労働日数)と一緒に働いているパートさん(適用事業所で期間の定めなく働いている)を想定して考えています。

加入しなければいけないパターン
週28時間30分以上の所定労働時間かつ1ヶ月15日以上の所定労働日数のパートさん
加入できないパターン
週28時間30分未満の所定労働時間または1ヶ月15日未満の所定労働日数のパートさん

平成31年に見直しが入る予定ですので、今後変更が加わる場合があります。第192回国会の臨時会で審議に入りました。内容は、労働者と使用者の合意があれば500人以下の会社でもパートタイム労働者への適用拡大が可能となるものです。

従業員(被保険者)数が500人を超える企業の場合

社会保険の被保険者数が500人を超える企業(事業主単位、つまり法人単位で判断)は、上でみた新しい4分の3要件と併せて、もう一つの加入要件が作られました。

パート・アルバイトの方が次の項目に全て該当する場合には、社会保険加入が求められます。大きい企業は加入要件が大きくなる、ということです。(厚生年金保険法 第十二条5項、附則十七条)

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金8.8万円以上
  3. 勤務期間が1年以上を見込まれること
  4. 学生ではないこと
  5. 従業員数が500人を超えている企業

上の5つの要素を、厚生労働省では「5要素」として呼称しています。大きい企業は、先に見た4分の3要件と5要素で加入が必要かどうか判断されます。

4分の3要件を再掲します。

  • 適用事業所で働いていること(従来と同じ)
  • 常態として働いていること(従来と同じ)
  • 事業所の通常の労働者の1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が4分の3以上であること(改正)

ですから、4分の3要件に当てはまっていなくとも、上の5要素を全て満たしていれば、加入義務が生じます。従来の4分の3要件が無くなる訳ではありません。両方で加入が必要か判断されます。

ここで要チェックすべき事があります。たとえ従来の社会保険加入の範囲から外れていて、健康保険の被扶養者の要件を満たしていても、今回追加された要件に当てはまっていると、その人は健康保険の加入義務が生じる点(扶養から外れる)です。整理して考えないといけません。

健康保険の被扶養者制度については、改めて下記記事を紹介します。

健康保険の被扶養者制度を解説!!106万円・130万円の壁、認定条件など(2016年10月改正対応)

次に、それぞれの要素について、簡単にご紹介します。

週の所定労働時間が20時間以上

1つ目の「週の所定労働時間が20時間以上」は、働くときの労働契約書、就業規則等で定められた労働条件で判断します。あらかじめ決められた労働時間(所定労働時間)を見るので、残業時間は含みません。

それで判断しがたい場合は、雇用保険の場合の取扱と同様の方法により判断されます。なお、雇用保険に加入している人はこの条件をクリアしています(雇用保険の加入条件の一つとして、週20時間以上の所定労働時間が定められていることが必要)。

  • 所定労働時間が1ヶ月単位で定められている場合は、1ヶ月の所定労働時間を12分の52で除して算定する
  • 特定の月の所定労働時間に例外的な長短がある場合は、特定の月を除いた通常の月で上記により判断する(百貨店のお歳暮・お中元シーズン、引っ越し業者の入学・転勤シーズンなど)
  • 所定労働時間が1年単位で定められている場合は、1年間の所定労働時間を52で除して算定する

上で出てくる「12」は1年間の月数を、「52」は1年間の週数を表しています。

月額賃金8.8万円以上

「月額賃金8.8万円以上であること」については、週給、日給、時間給を一定の計算方法により月額に換算した額が88,000円以上であることを指します。いわゆる「106万円の壁」です。

「106万円の壁」は頭に残り易い言葉ではありますが、大きな誤解を生むものです。あたかも過去の年収等の合計で判断されると思われがちですが、税とは違います。

厚生労働省では、加入を判断する時点の賃金で判定するとしており、雇用契約書や就業規則等で定められた月額賃金が88,000円以上かどうかを見ることとしています。そこから転じて「88,000円×12ヶ月=約106万円」といった表現が生まれています。

ある月によっては労働日数が少なく88,000円を下回ることもあるかもしれません(お盆休みのある8月や年末年始休みのある12・1月)。ですが、雇用契約書など書面をベースとして考えるため、たまたまある月が下回ったとしても、何も影響は有りません。
加入の判定をするにあたっては、次のものを外して88,000円以上かどうかを考えます。

  1. 臨時に支払われる賃金(慶弔金等)及び1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  2. 所定時間外労働、所定休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金
  3. 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当(現在、最低賃金法で最低賃金計算から除外されているもの)

こちらは曖昧な箇所があるため、深く言及は出来ませんが、おおよそ現行の最低賃金法と足並みをそろえる形になろうかと思います。詳細は今後の省令で決まるようです。

なお、加入が決まった場合の保険料算定については、通勤費・交通費、時間外労働等の割増賃金などを含めて計算されます。

勤務期間が1年以上を見込まれること

「勤務期間が1年以上」とは、期間の定めの無い雇用契約や、定めがある場合は雇用見込みの期間が1年以上の雇用契約期間である時などが当てはまります。あくまで「見込まれること」なので、実際に1年間勤務している実績が求められるわけではありません。

1年未満の雇用契約だった場合でも、契約書書面で更新される、または更新される可能性がある等がうたわれており、同じような働き方をしている人が実際に1年以上働いている環境であれば、加入要件を満たします。

学生ではないこと

学生さんは、学業が本分であり被用者保険には馴染みません。よって学生さんは除外対象なのですが、例外があります。

  1. 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定の者
  2. 休学中の者
  3. 大学の夜間学部及び高等学校の夜間等の定時制の課程の者

例外については雇用保険法に準拠しています。上記の学生さんの場合は加入要件を満たします。

パートやアルバイトの社会保険の加入メリット

パートやアルバイトの人が、社会保険に加入した場合は、大きな恩恵があります。社会保障制度について、メリットやデメリットという観点から論じるのはあまり好ましくありませんが、便宜上このような形でお伝えします。

厚生年金保険のメリット

年金制度で考えると、年金が支給される事由に該当すれば、国民年金だけでなく、厚生年金保険からも年金が支給されます。国民年金だけの時より所得保障が厚く、もしもの時に安心です。

何かあった時に、入っておいて良かったと思える制度です。特に、不幸にも障害を負われたときには、障害基礎年金と共に障害厚生年金が支給されます。障害厚生年金は有ると無いとでは全く違います。若年者が障害を負われた時には300月保障があるため、手厚い給付がなされます。

障害は縁遠い話と思われがちですが、私の身近なケースとして、若くして脳出血で倒れられて寝たきりになられる方や脊椎損傷で不自由になられた方がいらっしゃり、障害厚生年金を受給されています。不幸は突然前触れも無く訪れます。ですから、非常に大切な制度です。

健康保険のメリット

一例として、国民年金保険や健康保険の扶養の時には支給されなかった、「傷病手当金」を給付できる場合があります。

これは私傷病(休日でのケガなど)がもとで、一定期間働けない場合に、生活補償として支給される保険給付です。

似たような制度として、「出産手当金」も給付される場合があります。これは産前産後の休業をする際、お給料が無い時の生活補償として支払われる保険給付です。

このように、ご自身が厚生年金保険・健康保険に入ることで、もしもの時の備えができます。公的制度なので、民間保険より非常に手厚い内容です

保険料は事業主と半分ずつ負担

厚生年金保険と健康保険の保険料は、本人と事業主が折半して負担します。それぞれ半分ずつ負担するので、今まで国民年金保険料や国民健康保険料を支払われていた方は、保険料負担が減る場合があります。

加入のデメリット

今まで被扶養者だった人は保険料負担の発生

ご自身が保険加入するわけですから、保険料負担が必要になります。目安としては、現在のお給料の総支給の約15%(厚年9%と健保5~6%)を負担するようになります。

しかし、日本では国民皆保険制度が実現しているので、原則、どんな形であれ保険料は発生しており、必ずしもデメリットというほどのことではありません。見た目は保険料を支払っていない健康保険法等の被扶養者であっても、扶養に入れた被保険者本が負担している仕組みとなっています(保険料率の上昇に繋がっています)。

老齢年金が支給制限を受ける

現在老齢年金を受給しながら働かれている方で、今回の適用拡大に伴い厚生年金保険の被保険者となった場合は、在職老齢年金の適用を受けます。

つまり、賃金と年金額の合計額によっては、老齢厚生年金の一部額が支給停止される場合があります。賃金と年金額の合計が65歳未満だと月当たり28万円、65歳以上だと47万円を超えると、その越えた部分の一定額の年金が止まります。

また、障害者・長期加入者の特例の老齢厚生年金を受給されている方は、被保険者になった場合は定額部分が停止されますが、経過措置として手続を行えば、定額部分の停止が解除されます。詳しくは年金機構のリーフレットをご確認ください。

「障害者または長期加入者特例に該当する老齢厚生年金を受けている方へ」(日本年金機構)

保険料の試算

健康保険・厚生年金保険の保険料は、下記の式で決まります。

標準報酬月額 × 保険料率

標準報酬月額とは、保険料を計算する上で使われる仮の月単位の給料額でして、例えば月の給料が9万円の場合、標準報酬月額は「88,000円」と定まります。この金額に保険料率を乗じます。

次に保険料率についてですが、保険料は会社と従業員がそれぞれ折半して負担しますので、保険料率も半分にして考えます。

厚生年金保険の保険料率は、28年9月から18.182%となりました。よって、半分の9.091%を使います。

健康保険の保険料率は、都道府県ごとに異なります。東京都だと28年3月から9.96%なので、半分にすると4.98%です。40歳以上65歳未満の人だと介護保険料も徴収されるので、その場合は11.54%の半分である5.77%の負担が必要です。

まとめると、毎月の保険料負担額はこんな感じです(28年10月時点、協会健保、東京都の例)。

健康保険料 介護保険料(40歳以上65歳未満) 厚生年金保険料
月給9万円

(標準報酬月額 88,000円)

4,382円 695円 8,001円
月給10万円

(同上 98,000円)

4,880円 775円 8,909円
月給11万円

(同上 110,000円)

5,478円 869円 10,000円

健康保険・厚生年金に入りたいのに、会社が手続をしてくれない時は?

上記で見てきた加入要件をクリアしており、自身も加入を望んでいるにも関わらず、会社がなかなか手続をしてくれない場合があります。

これは、会社がそもそも法律に明るくない事や、財務的な問題から先延ばしにしている事が理由として見受けられます。会社の規模が小さいと保険料負担は結構辛いものです。ですが、良い人材が定着する要素の一つですので、頑張ってもらいたいところです。社会保険の有る無しで、人材の確保や定着に有意な差があります。

このような時の対処法としては、ご本人さんと会社さんがしっかりと加入に向けて話し合っていくことが一番です。お互い穏やかに相談してください。労働者と会社は持ちつ持たれつ、本来対等な関係です。

なお、よく勘違いされることが、労働基準監督に駆け込む例です。労働基準監督署に相談しても、先ず対応はしてくれません。あそこは労働基準法ならびに周辺の諸法令が管轄のためです。

もし、公的機関に相談するのであれば、お近くの年金事務所が対応してくれる場合があります。電話の場合は「ねんきんダイヤル」にお問い合わせください。

退職等で資格を喪失した時は?

どんな形であれ退職した等で健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を喪失した場合は、年金と公的医療保険制度の手続をしなくてはいけません。

国民皆年金・保険制度が整備されているので、ほとんどの人が年金と各公的医療制度に入ります。

年金の場合、無職や自営業を始める20歳以上60歳未満の人は国民年金の第2号被保険者から第1号被保険者への種別変更手続を市役所で行います。20歳以上60歳未満の扶養していた被扶養配偶者で国民年金第3号被保険者がいる時は、同じように第3号から第1号への手続が必要です。

医療保険制度の場合、様々な選択肢があります。詳しくは下記記事で解説しています。

退職後の健康保険の仕組みや手続総まとめ!!国保や任意継続ではどちらがいいのか?

なお、前の職場を退社後、一日の空白が無く次の職場へ就職して、そこで厚生年金保険・健康保険等に加入する場合はそれぞれの職場が手続をしてくれます。

あとがき

保険料負担が少々重荷ですが、もしもの時や老後に備えて社会保険に加入することには大いに意義があります。

実際に、ケガで働けなくなったり、突然に障害を負われた方を目の当たりにした私としては、デメリットは感じられず、逆に入るべきと常々思っています。

会社さんへは、保険料負担は痛いでしょうが、CSRの観点からも是非パートさん・アルバイトさんの社会保険の資格取得へ動いていただけるよう願うばかりです。