退職後の健康保険の仕組みや手続総まとめ!!国保や任意継続ではどちらがいいのか?

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退職した後の健康保険(公的医療保険)はどうすればいいのか。様々な情報が錯綜している中、どれが一番適しているのか判断するのは難しいものです。

日本では世界に誇れる国民皆保険制度が整備されており、皆がいずれかの医療保険制度に加入し安心して医療サービスを受けられる仕組みとなっています。

とは言っても、医療保険制度は一つ二つの話ではなく、また一つの医療保険制度にしても様々な条件があり分かり辛い現状があります。

ここでは74歳未満の方で健康保険法をベースとして、退職後の医療保険について考えていきます。もちろん退職された公務員や私学教員の方々にも対応できるように綴っています。

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保険証はいつまで使えるの?

退職した時、保険証(正確には被保険者証)はいつまで使えるのでしょうか。

答えは「退職日まで」です。退職日当日まで使えます。退職日の翌日になると、まだ手元に保険証を持っていたとしても、その保険証は使えません。

退職日の翌日は資格喪失日といい、文字通り健康保険の被保険者の資格が無くなった事を意味します。資格が無いのだから、保険証が使えないのです。ですから、退職したら早急に保険証を会社へ返しましょう。

健康保険等の扶養家族の分も使えなくなるので、当然に返却しなければいけません。

退職日後に保険証を使ったらどうなる?

退職した後に保険証を会社へ返却せず、そのまま医療機関で使った場合はどうなるのでしょうか。健康保険の例を見ていきます。

医療機関の窓口では退職した事実が直ぐには把握できないので、いつものように3割の自己負担額を支払って医療サービスを受けられる格好となりますが、これはあくまで表面上のものです。

実際は被保険者資格を失っているのでその保険証は無効です。よって7割の額を健康保険協会などが立て替えているだけであり、後日、その7割分の費用の返還が求められます。

健康保険協会などが費用の返還を請求したにもかかわらず、返還に応じなかった場合は裁判所への法的手続きを経て給与や預金などの差し押さえが行われることとなります。最悪、詐欺罪等で処罰されます。

このような事にならないように、退職したら(出来れば退職日までに)保険証を会社に渡しましょう。

退職後の健康保険はどうすればいい?

退職後の健康保険(公的医療保険)はどうればいいのでしょうか。

基本として4つのパターンがあります。

  1. 再就職先の医療保険制度に加入
  2. 健康保険等の任意継続制度に加入
  3. 国民健康保険に加入
  4. 家族の健康保険等の扶養に入る

前にも触れましたが、生きている間は医療保険制度に必ず加入します。この4つについて紹介します。

75歳以上の方などは既に後期高齢者医療制度に強制加入しているので、考える必要はありません。

再就職先の医療保険制度に加入

1つ目のパターンとして、退職した後に間を空けずに新しい就職先で保険加入することが考えられます。企業などで働く人が加入することになる公的医療保険を一般的に「被用者保険」と呼びます。

その被用者保険の一つである健康保険に加入する人を被保険者、共済組合に加入する人を組合員と呼びます。

新しい勤め先が民間企業だとしたら、一般的に、中小企業では全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)管掌の健康保険、大手企業やその関連会社では健康保険組合が運営する健康保険に加入します。

国家・地方公務員となったり、学校法人で勤めることになる場合は、それらに対応した共済組合に加入します。加入要件は各制度毎に異なります。新しい勤め先で確認してみましょう。

健康保険・厚生年金保険の加入条件などは次の記事で扱っています。パート・アルバイトの方向けですが、フルタイムで働く方にも対応しています。

パート・アルバイトの社会保険の基礎知識!!加入条件など(2016年10月改正対応)

勤め先が健康保険等に入っていなかったら

新しい勤め先自体が医療保険制度に加入していない場合は、改めて次のいずれかを判断しないといけません。

  • 健康保険等の任意継続制度に加入
  • 国民健康保険に加入
  • 家族の健康保険等の扶養に入る

健康保険の任意継続制度に加入

2つ目の方法は健康保険や各共済組合の任意継続制度に加入することです。

健康保険法や各共済組合では、退職して一旦健康保険や共済組合から抜けた場合でも、退職者本人の意思で継続して、直近の在職時の健康保険・共済組合へ加入することが出来ます。

加入するしないは本人の意思、つまり任意ということで「任意継続」という名称が付いています。

任意継続制度の加入要件

ここからは健康保険法をベースでお伝えします。次の加入条件をどちらも満たす必要があります。

  1. 資格喪失日の前日(退職日)までに、被保険者期間が継続して2ヶ月以上あること
  2. 資格喪失日の翌日(退職日の翌日)から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること

項目aの被保険者期間とは、在職中に健康保険等に加入していた期間を指します。一つの目安として、退職する(した)直近の会社で2ヶ月以上にわたり健康保険料がお給料から引かれていたら問題ないでしょう。

項目bはとても大切です。退職日の翌日から20日以内に必ず手続をしなければいけません。1日でも遅れると、加入することはできません。迷っていても、早めに決断してください。

任意継続制度の加入手続き

全国健康保険協会(協会けんぽ)管掌の健康保険の場合、本人が「任意継続被保険者資格取得申出書」はインターネットでダウンロードしたものを記入して各都道府県の支部へ郵送するか、年金事務所内に併設してある窓口で書類に記入して提出する方法があります。

健康保険や共済組合に改めて加入するので、扶養制度があります。扶養する家族もいるのであれば、併せて手続が行えます。

任意継続被保険者資格取得申出書」から申請書がダウンロードできます。

必要書類等の確認や送付先については、各都道府県の協会支部(連絡先一覧)へお聞きください。

任意継続制度に加入できる期間

加入できる期間は最長で2年間です。退職日の翌日から加入したものとして扱われます。

任意継続の資格喪失する時は?

任意継続被保険者は、次のいずれかに該当したときのみ資格を喪失します。「自身が国民健康保険に切り替えたい」、「家族の健康保険の扶養に入りたい」といった理由で喪失する事は出来ません。

  1. 納期限までに保険料を納めなかったとき(毎月10日期限)
  2. 任意継続被保険者となった日から2年を経過したとき
  3. 任意継続被保険者本人が亡くなったとき
  4. 就職などにより健康保険・共済組合に加入したとき
  5. 75歳到達などにより、後期高齢者医療制度に加入したとき

任意継続の保険料は?

協会けんぽ管掌の任意継続被保険者1ヶ月分の保険料は次の計算式でもとめます。

退職時点の標準報酬月額×各都道府県の保険料率

退職時点の標準報酬月額とは、勤めていた事業主によって届出された給与の額です。任意継続保険料を計算する上で、28年9月現在は280,000円が上限です。

保険料率は各都道府県によって異なります。40歳以上65歳未満であれば、介護保険料の負担も必要です。

おおまかな計算ではありますが、平均的な給料を受けている方の場合は健康保険料が勤めていたときの2倍になると思っていただければ良いかと思います。

なお、保険料の上限(28年9月時点)は、一番保険料率が高い都道府県で試算して、月当たり約29,000円(40歳以上65歳未満の場合は、介護保険料を含み約33,000円)です。

健康保険組合管掌の任意継続の場合は、各健康保険組合によって保険料が異なります。加入している(していた)組合へ確認してみてください。

国民健康保険に加入する

3つ目の選択肢は、各市町村が運営する国民健康保険に加入することです。

職場の健康保険等(健康保険組合、共済組合、船員保険など含む)に加入している方(被扶養者含む)、後期高齢者医療制度に加入している方、生活保護を受けている方以外は基本的に国民健康保険に加入します。

国民健康保険の加入条件など

国民健康保険の加入手続きは本人が市役所に赴く必要があります。加入条件や必要書類については、各市町村ごとに若干異なりますので、お住まいの市役所の国民健康保険の担当課や支所でお尋ねください。

退職前に家族を健康保険等の扶養に入れていた時、退職後は家族も扶養から外れます。その際は任意継続制度を利用しない場合は、家族も一緒に国保に加入し被保険者となります。

国民健康保険には扶養という概念が無いためです。

家族が被保険者になるということは、保険料が発生することを意味します。保険料は各被保険者から徴収する訳ではなく、世帯主が全員分をまとめて支払います。

国民健康保険の保険料は?

各市町村毎の運営なので、保険料もそれぞれ異なっています。前年度の所得を基本として、世帯人数や資産などにより決まります。

また、保険料収入や保険給付支出の収支バランスの違いで各自治体ごとに保険料負担が変わってきます。失業中の人やリタイアした人が多い地域だと、保険料収入が見込めず支出が増える一方なため、負担が大きくなっています。

東京都文京区の例

一例として、東京都文京区在住で年収500万円の方(35歳、独身)の場合を試算してみました。

28年度分の保険料計算です。計算に使う前年度(計算例では27年度)の給与所得は346万円(給与額500万円-給与所得控除154万円)です。

  • 所得割額:(346万円-基礎控除33万円=313万円)×8.88%=277,944円
  • 均等割額:46,200円
  • 合計金額:324,144円

年間32万円ほどになりました。月当たりでみると約27,000円です。家族も一緒に国保に加入するとなると、保険料はこれより上がります。

また、28年度の文京区における世帯全体の国保保険料上限額は次の額でした。

  • 世帯全員が40歳未満又は65歳以上の場合は年間73万円
  • 40歳以上65歳未満の世帯員が居る場合は年間89万円

福岡県福岡市の例

東京都文京区と同じ状況で計算すると、福岡県福岡市の国保保険料(28年度)は次のようになりました。

  • 所得割+均等割+世帯割=407,400円

年間40万円です。月当たりだと約33,000円。東京都文京区に比べ年8万円もの差が出ています。家族が一緒に国保に入ればこれよりも保険料が高くなります…。

どの自治体も財政難から、国民健康保険料は上昇傾向にあります。

国民健康保険の保険料の特例

会社の倒産や解雇など自分が望まない失業した際には、国民健康保険の特例として保険料が減額される場合があります。この軽減特例は、雇用保険の離職票で判断がなされます。

少し具体的に言えば、雇用保険の特定受給資格者(例:倒産・解雇などにより離職された方)・雇用保険の特定理由離職者(例:雇止めなどにより離職された方)として基本手当(いわゆる失業給付)を受ける方が対象です。

どれくらい軽減されるのでしょうか。国保の保険料を計算する際、前年の所得を100分の30として計算されます。これまた大雑把にいうと、保険料が本来の3分の1程度になるということです。

軽減期間は、離職日の翌日から翌年度末までです。

詳しくはお住まいの市町村の国民健康保険担当課にご相談ください。

家族の健康保険等の扶養に入る

退職した後に、家族が健康保険等(健康保険組合、共済組合など含む)に加入しており(各種保険に加入している人を被保険者や加入者と呼びます)、家族によって生計を維持するような状況にある時は、その家族の扶養に入ることが出来ます。

加入条件はそこそこ厳しい

各医療保険制度において扶養の認定を受けられる条件は異なりますが、健康保険の扶養については下記記事で解説していますのでそちらをご参照ください。

雇用保険から失業時の基本手当を受け取る場合の取り扱いなどを解説しています。

健康保険の被扶養者を解説!!106万円の壁、130万円の壁、家族の範囲、収入などの認定基準

扶養の場合は保険料は発生しない

扶養に認定された場合、扶養となった人(被扶養者と呼びます)は保険料を直接負担する事はありません。間接的に、被保険者が負担する保険料から支払われます。

どれを選んだらいいのか

退職後の医療保険に悩むモモ

以上4つのパターンを紹介しました。一番良いのは、収入もあり医療保険が充実している1番目の「再就職先の医療保険に加入する」です。

ほかの3つに比べて大きく違う点は、私傷病で働けないときに支給される「傷病手当金」と、産前産後で休業するときに支給される「出産手当金」が備わっていることです。

ですが、諸事情により早期に就職は難しい場合が往々にしてあります。よくある状況に応じて選択してみましょう。

パターン別で国保、任意継続、被扶養者のどれが良いか

被扶養者要件を満たせる時

家族が加入している医療保険制度の扶養認定を受けられるようでしたら、そちらが金銭面で最良の選択肢でしょう。

非自発的な退職の時

会社が倒産したり、解雇されるなどで思いがけない失業をした場合、任意継続より国民健康保険を選んだ方が保険料が安くなることが多いです。

おそらく、配偶者や子どもがいる家庭でも、軽減措置の受けた国民健康保険料の方が負担は少ないでしょう。

心配ならば、市役所の国民健康保険の担当部署へ本人が問い合わせをすれば、国民健康保険料の軽減措置は受けられそうか、保険料はいくらぐらいになるかという質問に答えてくれます。その確認をしてから選べば安心です。

給付内容については、協会けんぽの任意継続と国民健康保険はほぼ同じです。財政が非常に厳しい市町村の国民健康保険は若干見劣りすることがありますが、そんなに大きな差ではありません。

健康保険組合管掌の任意継続に加入できる場合は、悩みどころです。法定の給付以外に組合独自の付加給付や、人間ドックの助成といった福利厚生サービスが行われることがあります。保険料負担に見合った手厚さと言えます。

これらをまとめると、保険料を重視すれば「国民健康保険」が第一順位となります。

自己都合退職の時

自己都合で職場を退職したときは、自身の今までの給与で判断が別れます。財政に余裕のある自治体(たとえば、東京都区内)であれば微妙ですが、大体の方は国保より任意継続の方が有利なことが多いでしょう。

国民健康保険は前年の1~12月の収入で保険料が計算されるので、給与が高ければ高いほど保険料もグ~ンと高くなります。お金に余裕が無い自治体であれば、予想以上に高くなることもあります。

一方で、任意継続は在職時の保険料の2倍が簡単な目安でありますが、比較的低いところに上限が設定されているので、保険料はすぐに頭打ちします。協会けんぽ管掌の任意継続の保険料上限は保険料率が高い都道府県でも月額29,000円(介護保険料は含まず)です。

給付内容で選ぶ時

保険給付の内容を重視して選ぶ場合を考えてみます。任意継続と国民健康保険と被扶養者のどれが良いのでしょうか。

給付重視で任意継続を考えるときは、やめる前に加入していた健康保険が「組合管掌」か「協会けんぽ管掌」かで話が違ってきます。

組合管掌の健康保険に加入していたのであれば、国保や被扶養者よりも断然組合管掌の任意継続が充実していることが多いです。独自の付加給付や福利厚生サービスは見逃せません。この場合は組合管掌の任意継続を選びましょう

協会けんぽ管掌の健康保険に加入していた人ですと、協会管掌の任意継続と国民健康保険・被扶養者はほぼ同じですので、条件が合えば被扶養者、そうでなければ任意継続を選択しておくといいでしょう。

任意継続と国保で迷った時の注意点

任意継続制度は退職日翌日から20日以内を過ぎると加入出来ませんので、先に国保に入って後からやっぱり任意継続に移るということは不可能です。ですので、国保と協会管掌の任意継続で迷ったのであれば、任意継続を選ぶことをおすすめします。

もちろん、市役所で国保保険料の確認も忘れずにしてください。